モクズガニをめぐる冒険 <下>
モクズガニをめぐる冒険<上>の続きです。
年度も変わりバタバタと事務仕事に追われる中、今年度のかんちゃわナイトもはじまり夏のまち暦ツアー企画の検討が進められました。季節的にはモクズガニが採れるといわれる季節での開催ということもあり、『幻のモクズガニを探す旅』リベンジの開催が決定します。
ここで、荒川での生物捕獲について少しご紹介します。荒川をはじめとした河川において、釣りや仕掛けにより生物を捕獲することは漁業法により制限が課せられています。埼玉県内では9つのエリアに分かれた各漁業協同組合がこの管理を行っています。北本市域の荒川は武蔵野漁業組合の管轄となり、趣味による釣りに関しても遊漁券の購入が義務づけられ、漁業組合はそれらの資金を水産資源の保護に充てます(鮎やヤマメの放流等)。今回の観光協会でのツアー開催にあたっても、武蔵野漁業組合の指導のもと遊漁券(通称:鑑札)を購入し実施しています。
←武蔵野漁業組合の遊漁券(鑑札)
ツアー実施が正式に決定し、観光協会でも蟹カゴを定期的に仕掛け続けましたが、依然としてモクズガニを捕まえることは出来ませんでした。
そんなある日、とある市民団体の会合にお邪魔した際、「モロコ」という小魚の天ぷらを出していただきました。聞いてみると、その市民団体の会員の方が荒川で投網によって採ってきたものだと言うのです。さっそく、モクズガニについても聞いてみると投網にたまに掛かるらしく、その方の友人に仕掛けを自作して採っている蟹取り名人がいるというのです。
今までの情報の中で一番モクズガニに近い人と出会えた瞬間でした。これが夏のツアー開催日のちょうど2週間前のこと。
観光協会でモクズガニを探している旨を説明し、その友人の方に分けていただくことが出来るのか伺ったところ、快くお譲りいただけることになりました。
モクズガニの存在を知り、1年近く少しずつその存在に近づいてきた日々に終止符が打たれたのは夏のまち暦ツアー当日でした。この間も観光協会でしかけ続けた蟹カゴには、モクズガニはおろか他の生きものも入っていることを見たことがなかった状態です。半信半疑の状態のまま、通い慣れた荒川のたもとでその蟹とり名人と初めてお会いしました。さっそく蟹カゴを仕掛けてある場所に案内してもらうと、そこは観光協会のカゴを仕掛けている場所から数10Mと離れていない場所だったのです。
さっそく名人は慣れた手つきで引揚げます。ドキドキの瞬間でした。
引揚げた名人自作のカゴには10匹近いモクズガニがいたのです。噂に違わぬ甲羅7〜8cmの大きな蟹がワサワサと動き回っています。名人曰く、カゴにえさを入れておくと一晩で10匹は採れるそうで、多いときは30匹も入ることがあるそうです。名人はそのカゴを2カ所に仕掛けており、欲しいという人に分けているといいます。
そのカゴからツアーの方に見ていただく為に、数匹をその場で分けていただきました。
そして、その蟹たちは今観光協会の事務所で展示公開しています。
モクズガニの成体が海に下る秋までの期間限定になりますので、ぜひこの機会に知られざる荒川の資源「モクズガニ」をご覧にいらしてください。
そんなこんなで『モクズガニをめぐる冒険』は一旦終了するわけですが、今後の観光においてこの経験をどう活かすかは正直まだわかりません。
ただ、知られざる地域資源に着目し、それを面白がって色々と動いていみることは、観光地としての認識がなされていない北本の観光、ひいては埼玉県における観光を考えるうえで色々なヒントが隠されているのだと思います。生活の延長にある「観光」として、地域を楽しむ工夫や、生活を豊かにする工夫を、色々と探していければと考えています。
− 後日談 −
夏のツアーも終了し、数日経った日のことです。観光協会で仕掛けていた、未だ蟹どころか生きものが一匹も掛かったことのない、蟹カゴを回収しにいくと、中にはビックリする程のモクズガニがいるのです!心臓止まるかと思いました。
ちょうどそんな状況に現れた件の蟹取り名人に聞くと、釣り人が面白がって釣った魚を餌として私たちのカゴに入れてくれていたのだそう。追っかけていた時にはなかなかその姿を見せてくれなかったのに、終えようとしたら向こうからゴッソリやってくる・・・。なかなか面白いものです。
事務所で展示している中にオスがいなかったので、オス1匹だけをひき取って、あとはエサを入れてくれたオッチャンたちに申し訳ないですが逃がしてきました。
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